ビールについてさまざまな知識を紹介している当サイト。「醸造家が教えるビール講座」第3回は「モルト」いついて解説しましょう。
ビールに欠かせないモルトって何?
ビールの材料と聞くとホップが一番に浮かぶ方が多いと思いますが、今モルト=麦芽もビールに欠かせない材料なんです。
ビールといえば金色のイメージですが、クラフトビールを飲みに行くと、さまざまな色合いのビールがあることに気づかされます。
白っぽかったり、赤銅色であったり、光も通さないほど真っ黒だったりと、ビールの色合いは実にバリエーションに富んでいます。
このビールの色を決める要因は、ほとんどの場合、使うモルトの状態、割合によって決まっているのです。
また、ビールのコクやアルコール感、香りにもモルトが大きな役割を果たしており、日本ではビールを「麦酒」と表記することからも分かる通り、ビールを語る上で、最も重要な原料なのです。
モルト=「麦芽」とは何?
そもそもモルトとは?
モルトは「麦芽」のこと。ビールでは、主に大麦を発芽させた状態で乾燥させたものを言います。
使われる大麦は基本的には二条大麦で、麦茶に使われる六条大麦とは別物です。
なぜ大麦を発芽させるの?
大麦は多くのデンプンを含んでおり、このデンプンを酵母の力でアルコールに変えることで、ビールとができあがります。しかし、発芽前の大麦のデンプンは大きすぎて、酵母が食べることができません。
そこで、大麦が発芽することで発生する酵素の力で、まずデンプンを糖に分解するのです。この工程を「糖化」といいますが、糖化を行うための酵素を発生させるために、大麦の発芽が必要だということです。
なぜ乾燥させるの?
発芽した麦芽をそのままにしておくと、大麦の芽が伸び、大きく育ってしまいます。するとアルコールになるはずのデンプンが、芽の成長に使われてしまうのです。乾燥させることによって、それ以上大麦の発芽が進まないように、抑制をかけます。
ビールにおけるモルトの役割は?
アルコールを造る
モルトの一番の役割は、なんといってもアルコールを生み出すことです。酵素がデンプンを糖化することによって、アルコールを生み出すための原料となります。逆に言えばモルトがなければ(ホップだけでは)アルコールは生まれません。
お酒の分類は、ワインならブドウ、日本酒なら米、ラムならサトウキビ、テキーラなら多肉植物、芋焼酎ならサツマイモ、と、どんな原料の糖をアルコールにするかによって、種類が決まります。これが、ビールにおいてはモルトなのです。
ビールの色を出す
モルトはその乾燥温度によって、さまざまな色合いのものがあります。それらモルトの色は、ダイレクトにビールの色に反映されるので、どんな色のモルトをどんな割合で使うかによってビールの色が調整されているのです。
香り、コク、味わいを表現する
モルトの種類によって、ロースト香やカラメル香、パンのような香りなど、多様な香りがあります。同じ色のビールでも、使うモルトが違えば香りも異なります。さらにコクや味わいといった部分は、ビールに残った糖分、つまり、モルトの種類や糖化の温度で大きく変わってきます。(糖化については別のコラムでご説明します)
醸造家目線でちょっと深い話になってしまいましたが、ぜひビールを飲むときに「モルト」のことを思い出してみてください。ビールをよりおいしく楽しめること確実です!
ほかのお酒は飲まなくてよいというほどのビール好き。
クラフトビールについて日々勉強中です!