歴史から考える、地ビールとクラフトビールの違いとは?

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ビールといえば、「生ビール」「瓶ビール」「地ビール」そして「クラフトビール」などたくさんのビールの種類があります。

生ビールや瓶ビールなどは、ビールの保存状態などの違いとある程度想像はつきますが、「地ビール」「クラフトビール」この2つの違いは知っていますか?

結論から言うと、「地ビール」も「クラフトビール」も、英語では「Craft beer」で、同じものなのです。

「地ビール」は、日本で生まれた単語で、お土産として地域性を表すため作られたものです。

では、クラフトビールとは何か?

クラフトビールと地ビールの違いはあるのか?解説していきます。

クラフトビールの定義とは?2000年代にクラフトビールが再燃するまで

アメリカのブルワーズ・アソシエーション(BA)、日本語で言うと「アメリカビール醸造家組合」といったようなアメリカの組織が、「クラフトビール」を定義付けをしています。

クラフトビールの定義は要約してずばり

・小規模であること

・独立していること

・伝統的な製法を守っていること

です!
(参照:https://www.brewersassociation.org/category/insights/

「小規模であること」とは、具体的にアメリカでの年間生産量が600万バレル以下の小規模醸造であることです。

1バレルはおおよそ160L弱です。

600万バレルとは単純計算おおよそ9億6000万リットルとなります。

このように数字からは全く想像つかない量のビールを醸造しているブルワリーも規定では小規模に分類されます。

アメリカの大地はやはり広かった。

次に「独立していること」とは、他の酒造に所有されたりされず、資本提携も受けずに生産する醸造所だけで醸造されていることを指しています。

そして、「伝統的な製法を守っていること」とは、「麦芽100%のビールを主力商品としているか、その大半が麦芽100%と酵母とホップを使っていること。」とされています。

製法と言うよりは材料に重きを置いているようです。

ただし、「味わいの特徴をだすためにその他の副原料を使っている場合は、麦芽100%にこだわる必要はない。」と付け加えもされています。

アメリカの歴史から見えてくる、アメリカクラフトビールの起こり。


17世紀にヨーロッパからアメリカ大陸への移住が始まり、ヨーロッパの技術がアメリカへと伝わっていきました。

その内の1つにビールの製造方法も伝えられたとされています。

最初にアメリカでビール作りを始めたのはイギリス人の入植者とされ、17世紀の間に各地で醸造所が誕生しましたが、産業としてイギリス人たちは安定させることができませんでした。

結果的に1830年代にアメリカへたどり着いたドイツ人移住者たちが、ビール醸造業を本格化させ精力的に推進することに。

アメリカ醸造家たちは当時主流だった発行方法で「エール」や「ポーター」と言われるビールを醸造していました。

しかし、やってきたドイツ人たちによって新しい発酵法が伝えられ大量生産に向いた「ラガー」と言われるビールが醸造されることになります。

ラガービールは、アメリカにおけるドイツ人の人口増加も後押しし、アメリカ人の間でも人気を得ます。

そこから、20世紀にかけてアメリカにおけるビール醸造はドイツ人が主導となり益々盛況。

現存するアメリカの大手醸造会社のほとんどがドイツ人たちが起こしたものです。

しかし、アメリカでは「バドワイザー」や「クアーズ」など、大手のビール醸造会社がアメリカのビールシェアをほとんど占めており、しかもほとんど味も大差なかったことから、アメリカのどこへいっても同じようなビールしか飲めないという不満から、クラフトビール醸造運動が始まりました。

クラフトビールでビールに個性を。アメリカンスタイルビールの誕生。


同じようなビールしか飲めないという、消費者の不満から「クラフトビール」は、はじまりました。

大手ビール醸造企業は大量生産のためにライトなビール作りをしているが、クラフトビールはヨーロッパの伝統的なビール作りの製法に立ち返り、味わい深いビールを作ることに焦点を合わせます。

ただ伝統的な製法に原点回帰するだけでなく、ヨーロッパの伝統的な製法に軸足をおきつつ、新しいエッセンスを加え、今までになかった新しいビールをアメリカでは醸造されるようになりました。

この製法はクラフトビールのアメリカンスタイルと言われています。

さらに、ヨーロッパの一部地域でしか採用されていないマニアック製法を再現したり、さらには進化させたりしていきました。

そんなアメリカで作られたクラフトビールは世界的に人気となっていき、ビール作りの伝統国でもアメリカンスタイルのビール作りによって、大きな衝撃が与えられています。

そして、2000年代に入るとクラフトビール醸造所数は急上昇し今も、増え続けているそうです。

以上のことをふまえると、クラフトビールの定義

・小規模であること

・独立していること

・伝統的な製法を守っていること

が、理解できたのではないでしょうか。

日本独自の言い回しの「地ビール」。クラフトビールの違いとは?


さて、クラフトビールについてここまで説明してまいりました。

では「地ビール」とはどんなものでしょう?

記事の冒頭でもお伝えしたように、地ビールとクラフトビールにほとんど違いはありません。

1994年に酒税法が一部改正され、ビールの製造免許を取得する際に必要な年間最低製造数量の基準が、従来の 2,000キロリットルから 60キロリットル (60,000リットル) へと大幅に引き下げられました。

そこで、観光資源として地域に密着したビール作りがブームとなるように。

地域の特性などをビールのテイストやラベルで表した小規模なビールが「地ビール」と言われるようになります。

「地酒」や「地鶏」などに対抗して「地ビール」というネーミングがつけられたとも言われています。

地ビールは、一部地域で作られる小規模醸造所の総称として使われており、特に定義もありません。

なのでクラフトビールとあえて区別するとすれば、クラフトビールよりも地域性をより表したものが「地ビール」と考えられます。

クラフトビール・地ビールのもつたくさんのビールの個性を楽しもう!


今回は、クラフトビールの歴史と、地ビールの起こりについてみてきました。

「クラフトビール」も「地ビール」も意味的に大した違いはありませんでしたが、歴史を遡るとなぜ「クラフトビール」や「地ビール」がでてきたのかがわかりますよね。

ビールに個性を求めた新時代に、ビール醸造家たちの飽くなき探究心が、たくさんの個性を持ったクラフトビールを作り上げてきました。

日本では、地域性に特化したビールを醸造し「地ビール」という概念を日本独自で確立しました。

クラフトビールも地ビールも醸造家たちの熱い思いがこもったビールとなっています。

ビールは個性を楽しむ時代。

たくさんのビールの中から自分のお気に入りを見つけてみてはいかがでしょうか?

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