「ブルーパブを開きたいけれど、いったいいくらかかるの?」
開業を検討している多くの方が最初につまずくのが、費用の全体像をつかめないことです。醸造設備だけでなく、物件・内装・許可申請・運転資金まで含めると、必要な資金は想像よりも大きくなることがほとんどです。
この記事でわかること:
- ブルーパブ開業に必要な費用の全体像(規模別シミュレーション付き)
- 醸造設備(仕込み釜・発酵タンク・充填機)の費用相場
- 物件・内装・許可申請のコスト
- 初期投資を減らすために見直せること
数字を軸に、順を追って解説します。
ブルーパブとは|醸造所とパブを一体化した業態

ブルーパブとは、クラフトビールの醸造所と飲食スペース(パブ)が同じ建物にある業態です。醸造タンクの隣でグラスを傾けるという、他の飲食業態にない体験が差別化になります。
国内では1994年の酒税法改正(最低製造数量の引き下げ)を機にマイクロブルワリーが全国に誕生。2010年代以降はクラフトビールブームの定着とともにブルーパブ業態が急増し、現在は地方観光地や商業施設への出店も珍しくなくなりました。
ただし、飲食店と製造業を兼ねるため、一般の飲食店よりも必要な許可や設備が多く、費用が大きくなる構造になっています。
ブルーパブ開業にかかる費用の全体像
開業費用は仕込み量(バッチ量)によって大きく変わります。規模別の目安を確認しましょう。
小規模(仕込み量300L):2,000〜3,500万円
300Lバッチで月2〜3回の仕込みを想定した場合、月産600〜900L程度が現実的な目安です。仕込み日はほぼ一日作業になるため、接客との兼務には限界があり、パートナーか補助スタッフの存在が不可欠です。
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 醸造設備一式 | 800〜1,500万円 |
| 物件取得・内装工事 | 500〜1,000万円 |
| 許可申請・運転資金 | 200〜500万円 |
| 合計 | 約2,000〜3,500万円 |
中規模(仕込み量1,000L):4,500〜6,000万円以上
本格的な量産と飲食スペースを両立するモデルです。スタッフを複数名雇用する規模感になります。
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 醸造設備一式 | 2,000〜3,500万円 |
| 物件取得・内装工事 | 1,500〜2,000万円 |
| 許可申請・運転資金 | 500〜800万円 |
| 合計 | 約4,500〜6,000万円以上 |
醸造設備の費用内訳
設備費は開業コストのなかで最大の割合を占めます。主な機器ごとに確認しましょう。
仕込みシステム(ブリューハウス)
仕込みシステムとは、麦汁(ばくじゅう)をつくる工程で使う設備群です。マッシュタン(糖化槽)・ケトル(煮沸釜)・ワールプール(旋回槽)などで構成されます。
新品の場合、300Lシステムで800〜1,500万円、1,000Lシステムで1,500〜3,000万円が目安です。中古・中国製輸入品であれば300Lで500万円台から選択肢があります。価格差の主因は自動化の度合いです。コスト優先なら半自動、品質安定を重視するなら全自動を選ぶのが定石です。
発酵タンク・ブライタンク
発酵タンクは、麦汁に酵母を加えてビールに変える容器です。底部が円錐形のコニカルタンクが現在の主流で、酵母の回収や洗浄がしやすい設計になっています。
1本あたり150〜500万円程度が目安で(製造国・仕様により変動)、バッチ数と生産量に合わせて複数本必要です。エール(IPA・ペールエール等)は発酵〜コンディショニングで2〜3週間が目安。エール主体なら最低3〜4本から始められます。
ラガー系スタイル(ピルスナー・ヘレス等)を並行する場合は、低温熟成(ラガリング:低温で4〜8週間保管し味を整える工程)が必要なため、発酵〜完成まで5〜6週間かかります。タンク回転率が大きく下がるため、ブライタンク(BBT:Bright Beer Tank)を別途用意し、5〜6本以上を前提に設計するのが現実的です。
タップライン・ケグ設備
ブルーパブでは生樽(ケグ)での提供が主体になるため、まずケグフィラー(樽への充填機)を優先するのが現実的です。ケグフィラーの導入コストは機種によりますが、50〜200万円程度が目安です。
缶・瓶での外販やテイクアウトを視野に入れる段階で初めて充填ラインを検討するケースが多く、開業初期から瓶詰め機に投資するブルーパブは比較的少数です。
設備以外にかかるコスト

物件取得費・内装工事費
醸造エリアと飲食スペースを兼ねる物件は、天井高・床荷重・排水能力に余裕が必要です。一般的な飲食店向け物件では要件を満たさないことも多く、条件に合う物件の確保だけで6か月以上かかるケースも珍しくありません。
内装工事費は300〜1,000万円程度が目安です。醸造エリアの床・排水工事は想定より費用がかさむことがあるため、見積もりを複数社から取ることを推奨します。
酒類製造免許の取得
ビールの製造には、税務署から酒類製造免許を取得する必要があります。申請手数料はなく、免許付与後に登録免許税として1件につき150,000円を納付します。ビールと発泡酒を両方取得する場合は合計300,000円です。
申請から交付まで2か月〜半年かかるのが一般的で、設備の搬入遅延や工事の遅れがあるとさらに延びます。
免許交付まで醸造も販売もできません。その間も家賃・人件費は止まらないため、手元資金は最低6か月分を確保することを前提に計画を立ててください。
なお、税務署は「製造場」と「販売場(飲食スペース)」を区別して管理します。区画の認め方は管轄税務署によって異なるため、内装設計の前に管轄税務署へ図面を持参して事前相談することが必須です。工事に入ってから「この区画では通らない」となると大幅なやり直しが生じます。
飲食店営業許可
パブ(飲食スペース)を運営するには保健所の飲食店営業許可も必要です。申請手数料は自治体によって異なりますが、16,000〜20,000円程度です。
初期投資を減らすために見直せること
① 中古設備・リースを検討する
新品の醸造設備は高額ですが、中古市場や設備リースを活用すると初期コストを抑えられます。実績のある仲介業者に限定し、設備の整備記録と保証条件を必ず確認してください。
② 小さく始めて段階的に拡大する
最初から大型設備を導入するのではなく、300Lクラスから始めて需要と資金を確認しながら拡張するアプローチが安全です。発酵タンクは後から増設できる設計にしておくと柔軟に対応できます。
③ 補助金・助成金を活用する
醸造設備は「ものづくり補助金」や各都道府県の設備投資補助金の対象になるケースがあります。ただし補助金は毎年要件・枠名が変わるため、最新の公募要領を中小企業庁のサイトで確認するか、認定支援機関(商工会議所・よろず支援拠点など)への相談が採択率を上げる近道です。
まとめ
ブルーパブ開業の初期費用は、小規模で2,000〜3,500万円、中規模で4,500〜6,000万円以上が目安です。醸造設備だけでなく、物件・内装・許可申請・運転資金を含めた総額で資金計画を立てることが重要です。
費用の全体像を把握したら、次は事業計画の策定と資金調達の方法を検討しましょう。
▶ ビアパブ開業プロジェクト① ~開業までの流れ~
▶ ビアパブ開業プロジェクト⑤ ~事業計画を作成する~
▶ ビール醸造研修とは?免許があればオリジナルビールが造れる?
23歳の時に古いビル1棟を飲食ビルにして起業。
ビールが好きすぎてクラフトビール醸造はじめちゃいました。

