醸造家が教えるビール講座6~糖化について その1~

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みなさん大好きなビールについて深い知識をご紹介している当サイト。「醸造家が教えるビール講座」の第6回はビールの製造過程についてご紹介します。ちょっと難しいですがビール通になりたいという方はぜひ読んでみてください!

糖化の原理〜そもそも糖化とは?〜

浅草橋 クラフトビール醸造所

糖化は読んで字のごとく、モルト(大麦)のデンプンを糖に変える工程のことです。モルトに含まれるデンプンは、糖の集合体です。アミラーゼという酵素の働きによって、マルトース(麦芽糖)、デキストリン、ブドウ糖に分解されます。
アミラーゼは、αアミラーゼ、βアミラーゼと2種類あり、それぞれ最大活性温度、失活温度、そしてデンプンの分解方法も異なっています。

αアミラーゼとβアミラーゼの働き

αアミラーゼはデンプンをランダムに切断していく作用があります。αアミラーゼの働きにより、さまざまな大きさのデンプン分解質が生まれます。細かく切れたものはブドウ糖やマルトース、大きく残ったものはデキストリンという物質となります。

βアミラーゼは、デンプンを端から細かく切断していく作用があり、大量のマルトースを生み出します。また、αアミラーゼの働きでできたデキストリンも、マルトースの大きさに分解していきます。

αアミラーゼは62~70℃位でもっとも活性し、それ以上の温度になるとたんぱく構造が壊れ失活してしまいます。βアミラーゼは60~68℃位で活性し、それ以上になると失活します。

これらの分解様式の違いと活性温度の違いは糖化の重要なポイントとなります。

タンパク質の分解について

糖化はデンプンの分解工程のことですが、糖化の効率化とクリーンな味わいを生み出すために、タンパク質の分解も行う場合があります。

特にドイツのモルトなどはタンパク質を多く含むため、タンパク質を分解しなければアミラーゼがうまく働かないのです。

タンパク質の分解はプロテアーゼという酵素の働きによって行います。プロテアーゼは活性温度が40~55℃位なので、アミラーゼよりも低い温度に設定する必要があります。このことが、ビールの製造工程に関わってくるのです。

まずは50℃位の温度でタンパク質を分解した後、70℃付近まで温度を上げて糖化を行います。

糖化にはさまざまな方法がある!

クラフトビールカンパニー

ここでは簡単に糖化の方法をご紹介しましょう。

デコクション法

たんぱく分解を行ったあと、麦汁の一部を沸騰させ、元の麦汁に戻すことで全体の温度を上げる糖化方法です。ドイツで開発された糖化方法で、日本でもドイツスタイルのビールを造るブルワリーでは、ほとんどの場合、デコクション法を採用しています。
デコクション法では、糖化槽に加温する機能が不要であるため、設備のコストが抑えられます。一方、麦汁を窯に移して再度戻すという手間がかかります。

ステップインフュージョン法

加温機能を持つ糖化槽で、既定の温度まで加熱して糖化を行う方法です。イギリスで開発された方法で、液体の移動がなく温度管理だけで糖化ができます。アメリカなどでも広く採用されている方法です。

シングルインフュージョン法

タンパク質の分解を行わない糖化方法。始めから糖化温度(70℃位)で糖化を行うという、シンプルな方法です。アメリカ産やイギリス産のモルトは、あえてタンパク質を分解しなくとも十分に糖化できます。また、中間温度(温度を上げている最中の温度)がないため、糖化効率などの計算・分析が容易だというメリットもあります。また、タンパク質が味に悪影響を及ぼすことも少ないと言われています。

これらの方法をブルワリーがそれぞれの目的によって、糖化の方法を使い分けています。

糖化の世界はご覧の通りとっても奥深いです。次回もこの糖化について、さらに詳しく解説いたします。お楽しみに!

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