浅草橋駅から一つ道に入ると問屋が多く並び下町情緒があふれだす街並み、そんな下町の一角に、大きなウッド調の扉が目印の醸造所があります。
「CRAFT BEER COMPANY(クラフトビールカンパニー)」の社名通りクラフトビールの醸造所です。英語でいうと「brewery(ブルワリー)」。
下町の1家屋で、「クラフトビールをもっとおもしろく!!」をコンセプトに日々オリジナルクラフトビール作りに励むブルワー(ビールを作る醸造家)をご紹介したいと思います。
毎日何の気なしに口にしていたビールには、作り手ならではのこだわりや、丁寧な製造工程、香りづけや味の決め手になる原料選定、知れば知るほど奥の深い世界が待っていました。
まるでアロマ!一歩踏み入れるとそこには麦汁の独特の香り
ブルワリーの扉をくぐると、大きな釜や、タンクが並ぶブルワリーらしい光景が広がります。それと同時に、煮出した麦汁の蒸気にのって、ビールの香りが優しく鼻を透き通ります。
ビールの香りというと、少し苦手意識を持つ人もいるかもしれません。しかし、ビールの香りづけとなるホップのおかげで、所内はアロマを感じるくらいいい香りです。
ビール作りは麦汁(ばくじゅう)を製造するところからはじまります。
麦汁を作るのに3つのタンクを使います。
まずはじめに、マッシュとよばれるタンクでお湯と麦芽を混ぜ甘い麦汁を作ります。
次に隣にある、ロイターとよばれるタンクで、麦汁を煮詰めてでた麦芽カスをろ過して手作業で取り除きます。麦芽カスは家畜の肥料などにも使われるそうですが、(東京下町のブルワリーだけに、周りに畜産農家がおらず引き取り手がいないそうです。)
麦芽カスを取り除いた麦汁をもう一度マッシュに戻し、100℃まで煮ていきます。100℃に達したら、ホップを加えさらに、1時間30分ほど煮込みます。
最後に、3つ目のタンクで、撹拌し固形物を沈殿させ、純度の高い麦汁が出来上がります。
これらの工程を経て、ビールの基礎となる麦汁は作られています。
麦汁からビールへ、その過程は数週間にも及ぶ進化の時間
1日かけて作られた麦汁は、冷却機を通って20℃まで温度を下げます。そこにイーストを入れてタンクの中で発酵がスタートしていきます。
発酵はおよそ1週間かけて、麦汁がビールの味や風味へと変化していく大事な期間です。
1つのタンクにおよそ1000L入っており、大きめのジョッキでおよそ2000杯分はあるそうです。
1週間かけて発酵した麦汁は、次は1週間の熟成期間へと入っていきます。最短で1週間であり、CRAFT BEER COMPANYでは2週間ほどかけるそうです。
つまり、麦汁ができてから実際に瓶詰めされるまではおおよそ3週間となります。
その3週間の間で、醸造長が味を確認しながら、ビールを最高の状態へと成長させていきます。ビールは生き物と言われるほど、発酵や熟成のスピードは違いそれぞれのビールの特徴を理解し、完成まで導くのも醸造長の繊細なケアによるもです。
ビールの炭酸は、発酵の際に自然と出るものではなく、味のばらつきを抑えるために瓶詰めされる前に人工的に炭酸ガスが注入されています。
ビールの評価ポイントである、のどごしも作り手によるものです。
真の”生ビール”を特別に試飲、実際に完成したビールを飲んでみた!
醸造長のご好意で、実際に発酵・熟成中のビールをタンク出しで試飲させていただきました。まさに真の生ビールとも言えます。
タンクの温度はおよそ20℃なので少しぬるめですが、顔の近くに持ってきた時のビールの香りは普段口にしているビールとは特段の差がありました。
画像右のビールはまるでトロピカルフルーツを思わせる、甘くて酸っぱいトロピカルフルーツそのもの香りがしました。口に含んでも、鼻から抜ける香りの心地いいこと。まさに初体験でした。
もう一方の左のビールは、ホップがまだ取り除かれていないまさに発酵中にビールです。先ほどとはうって変わって、ビールらしい麦の香りがしっかりしています。
味はさすがまだホップが入っているともあり、かなり苦い。しかし、完成前のビールを飲めるなんて本当に貴重な体験でした。
CRAFT BEER COMPANYでは、クラフトビールの直販も行っています。ブルワーに行けば随時買えるそうです。行ったタイミングによって出来上がっているクラフトビールの種類もそれぞれで、購入できるクラフトビールの種類も変わってきます。
取材時には、「ねこぱんち」と「Vector Pale Ale」の2種類を購入することができました。
「ねこぱんち」は、すっきりと女性でも飲みやすく香り豊かさが特徴的でした。パンチ力で例えるとまさに「ねこぱんち」ほどです。
「Vector Pale Ale」はビールらしいクラフトビールでしっかりとした苦味と香り、飲みごたえのある味でした。
クラフトビールをもっとおもしろく。下町のブルワリーの熱い挑戦は続いてく
今回はCRAFT BEER COMPANYのブルワーを取材しました。
普段なんとなく飲んでいるビールには、たくさんの作業と時間、醸造家の知見や工夫がいっぱいにつまっていることを実感。
さらにクラフトビールは、ブルワーによって香りや味、材料は大きく異なり、ビールの味の違いを楽しむ、日本の新たな文化の兆しを感じます。
クラフトビールは、1杯目としてのビールだけではなく、様々な味の違いを楽しませてくれること間違いありません。
クラフトビールの美味しさ、奥深さを日本中に広めるべく活動しています。
おいしいクラフトビールが飲めるお店やビールイベントなど、ビール好きにはたまらない情報満載!
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