はじめに
「好きなクラフトビールを仕事にしたい」。
そう考えて検索すると、求人の少なさに驚いた方も多いはずです。
この記事では、クラフトビール業界の主要職種ごとに、仕事内容・年収レンジ・求められるスキル・採用ルートを整理します。
未経験から入るための現実的なステップ、業界の良い面と厳しい面の両方を、忖度なくお伝えします。
「憧れだけでは続かない」業界だからこそ、入る前に知っておきたいリアルを書きました。
クラフトビール業界の構造|全体像を3分で

業界規模と成長性
国税庁の統計によると、日本の地ビール製造免許場は2019年に400を超え、2024年末時点で900を上回る規模まで拡大しました。
1994年の酒税法改正でビール製造の最低製造量が年間2,000kLから60kLに大幅に引き下げられたことが、現在のクラフトビール業界の出発点です。
さらに2018年の改正でビールの「定義」が拡大され、副原料に果実・香辛料・コーヒー・ハーブなどが使用可能となり、商品の多様化が一気に進みました。
主な職場の種類
クラフトビール業界の働き口は、大きく3つに分かれます。
- 製造側:ブルワリー(醸造所)/大手の研究開発部門
- 流通・販売側:酒販店/インポーター/ECサイト運営
- 飲食・接客側:ビアパブ/タップルーム/ボトルショップ
未経験から目指す場合、最初の入口として現実的なのは飲食・接客側です。
職種別|仕事内容と年収レンジ
1. ブルワー(醸造家)
ビールを実際に造る職人です。
仕事は仕込み・発酵管理・パッケージング・タンク洗浄まで多岐にわたります。
1日の流れ(例)
8時:仕込み開始/粉砕した麦芽を糖化釜へ
11時:煮沸とホップ投入
15時:発酵タンクへ移送
16時:清掃、レシピ検討、酵母管理
年収レンジ
- 未経験〜3年目:240万〜350万円
- 中堅(5〜10年):350万〜500万円
- ヘッドブルワー:500万〜700万円程度
求められること
体力、化学・微生物への興味、地道な清掃作業を厭わない姿勢。
華やかなイメージとは裏腹に、業務時間の半分以上は「洗浄」と言われるほど地道な仕事です。
2. 営業・卸(B2B)
完成したビールを酒販店や飲食店に売り込む仕事。
試飲会の運営、新商品プロモーション、樽の納品まで担当することもあります。
年収レンジ
- 未経験〜3年目:280万〜400万円
- 中堅:400万〜550万円
求められること
クラフトビールへの知識と、料飲店オーナーとの関係構築力。
「人懐っこさ」がそのまま売上に直結する仕事です。
3. ビアパブ・タップルームスタッフ
10種前後のタップを管理し、お客様にビールを提供する仕事。
スタイル説明、料理とのペアリング提案、樽交換、洗浄まで担います。
年収レンジ
- アルバイト:時給1,100〜1,500円
- 正社員:280万〜380万円
- 店長クラス:380万〜500万円
求められること
ビアスタイルの知識(最低でも代表的な10スタイルは即答できるレベル)、接客力、立ち仕事に耐える体力。
4. ボトルショップスタッフ・バイヤー
クラフトビール専門の酒販店で接客と仕入れを行う仕事。
全国のブルワリーから新作を仕入れ、お客様の好みに合わせて提案します。
年収レンジ
- 未経験:250万〜350万円
- バイヤー職:350万〜500万円
5. インポーター・輸入商社
海外のクラフトビールを日本に輸入する仕事。
ブルワリーとの交渉、コンテナ手配、温度管理されたコールドチェーンの構築まで担います。
英語力と物流知識が必須で、業界の中では比較的高めの年収レンジ(400万〜700万円)に位置します。
未経験からクラフトビール業界に入る3ルート

ルート1:ビアパブ・タップルームから始める
最も入りやすい入口。
求人が常に出ており、未経験歓迎の店舗も多くあります。
ここで2〜3年スタイル知識と接客経験を積み、醸造側・卸側へキャリアチェンジするのが王道です。
ルート2:ビアジャッジ・サーティフィケート取得
日本地ビール協会(JCBA/クラフトビア・アソシエーション)認定のビアテイスター資格や、Cicerone Certification Program(米国基準)を取得することで、業界知識を客観的に示せます。
転職時の「本気度」を伝える材料として有効です。
ルート3:ブルワリーの研修・インターン
一部のブルワリーは、未経験者向けの研修プログラムを設けています。
給与は出ない or 低額の場合もありますが、「現場経験ゼロ」の壁を越える有効な方法のひとつ。
ヤッホーブルーイング、COEDOブルワリー、伊勢角屋麦酒など、新卒・中途採用に積極的なブルワリーは公式サイトの採用ページを定期的にチェックしましょう。
求人を探せるサイト・媒体
業界専門サイト
- ビアQ(beerq.net):日本のビール業界に特化した事実上唯一の専門求人サイト。ブルワー・営業・店舗スタッフまで幅広く掲載
一般求人サイト
ブルワリー直アクセス・SNS
- 各ブルワリー公式サイトの採用ページ:少人数ブルワリーは公募せず採用するケースも多いため、気になる醸造所は定期チェックが必須
- 各ブルワリー公式X(旧Twitter):求人告知が最速で出る
- 醸造所イベントでの直接アプローチ:「顔」採用が多い小規模ブルワリーへの王道ルート
業界のリアル|入る前に知っておきたい3つのこと
1. 給与は決して高くない
正直に書きます。
クラフトビール業界の年収は、同年代の一般職と比べて1〜2割低い傾向があります。
「好きを仕事にする」対価として、金銭面の妥協は避けられません。
2. 体力勝負
20Lの樽は満タンで25kg超。これを1日に何本も運びます。
醸造現場は粉塵と熱気の中での作業で、夏場のサウナ状態は覚悟が必要です。
3. それでも続ける人がいる理由
自分が造った(売った/提供した)ビールで、お客様の表情が変わる瞬間がある。
これに勝るやりがいはない、と業界人の多くが口を揃えます。
「お金以外の何か」を求めている人にとっては、これ以上ない仕事です。
まとめ
クラフトビール業界で働くことは、決して楽な道ではありません。
ですが、業界はまだ成長期。新しい挑戦を歓迎する空気が確実にあります。
未経験者がまず取るべきアクションは3つ。
- まずはお気に入りのブルワリーを見つけ、オーナーに話を聞く
- 近所のビアパブで週末アルバイトから始め、ビール知識を学ぶ
- ビアテイスター資格に挑戦する
- ビアQ に登録し、気になるブルワリー公式サイトの採用ページを定期チェックする
業界の今を数字で知りたい方はクラフトビール市場2026|数字で見る成長と酒税法改正の影響もぜひお読みください。
ペアリング知識を深めるにはクラフトビールに合う料理は?ペアリング3原則とスタイル別ガイドが役立ちます。
「好きを仕事に」する第一歩を、今日から始めてみませんか。
23歳の時に古いビル1棟を飲食ビルにして起業。
ビールが好きすぎてクラフトビール醸造はじめちゃいました。

