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コラム

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2015.10.25

「地ビール」と「クラフトビール」の違いと定義(クラフトビールとは)

クラフトビール(craft beer)って何?」って誰かに急に訊(き)かれてもなんだかよく分からいですよね。「地ビール」とどこが違うの?って新たな疑問が湧いてきます。

日本では、地ビールもクラフトビールもどちらも「小規模醸造」という意味では同じカテゴリーに入ります。これは、1994年(平成6年)4月の酒税法の改正により、ビールの最低製造数量基準がそれまでの年間2000klから600klに緩和されたことを受けて、全国各地に誕生した地域密着型・小規模醸造の製造会社により造られる、ローカルブランドのビールを指しているからです。

ですから英語では、どちらもcraft beerです。クラフトビールを醸造する会社や醸造所のことをマイクロ・ブリュワリー(Micro Brewery)と呼びます。

1994年当時の日本では、日本酒を造っていた会社が、新規事業としてビール製造を始めたり、ビールとはそれまでまったく関係のなかった会社が、ビール製造事業に新規参入するケースも見られました。たとえば、建設・不動産会社ですとか、観光会社などです。いわゆるご当地ビール(お土産)ビールが流行った頃です。その味わいや品質のレベルはまちまちでした。それが、自然淘汰されて2000年代初頭に入って再び「クラフトビール」ブームが巻き起こりました。

ここで、アメリカのブルワーズ・アソシエーション(BA)が「クラフトビール」の定義を提示していますのでご紹介しておきます。

http://www.brewersassociation.org/pages/business-t...

要約しますとクラフトビール(またはクラフトビール醸造所)とは、

1.小規模であること

・アメリカでの年間生産量が600万バレル(約70万kl)以下であること。

2.独立していること

・クラフトビールメーカー以外の酒造メーカーに所有されていたり、資本提携がなされていないこと。

3.伝統的な製法を守っていること

・麦芽100%のビールを主力商品としているか、その大半が麦芽100%と酵母とホップを使っていること。ただし、味わいの特徴をだすためにその他の副原料を使っている場合は、麦芽100%にこだわる必要はない。

とされています。


これをそのまま日本に当てはめることはできませんので、そこで、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会の代表理事である藤原ヒロユキ氏の言葉を借りることにします。

『・はたして定義は必要なのか?ビールはビールにほかならない。つまり、クラフトビールは規模の問題でも、造られている場所の問題でもないということだ。クラフトビールに必要なことは、造り手(ブルワー)がビールと真摯に向き合っているかどうか?ということでる。「クラフトビールとは、"ビールおたく"と呼ぶにふさわしい、"年がら年中ビールのことで頭がいっぱいな連中"が造りだすビール」なのである。そんなビールおたくなブルワー達が造る「伝統的なスタイルを厳守または踏襲したビール、独自の解釈でスタイルを進化させたビール、ユニークな副原料や醸造法を使った独創的なビール」である。』

とクラフトビールにかける熱い思いを語っています。けだし名言だと思い、ここにご紹介しました。

話は戻って、クラフトビールの起こりについて続けます。それでは、なぜ2000年代に入ってクラフトビール・ブームが再燃したのでしょうか?

ビールの伝統的な国と言えば、すぐに頭に思い浮かぶのは、ドイツ・イギリス・ベルギー・チェコなどのいわゆるビール造りの歴史的な国です。勿論、日本も入ります。そして、忘れてはならないのがアメリカです。


実は、そのアメリカが「現代クラフトビール」の発祥の地と呼ばれているのが、クラフトビール業界の常識となっています。2000年代の世界的な「クラフトビール」の再燃ムーブメントを巻き起こしたのが、アメリカだったからです。

アメリカの二大ビール会社と小規模醸造家たち

新世界と言われる南北アメリカ大陸には、16世紀終わり頃から17世紀初めにかけて、ヨーロッパ大陸からの移住者がビール造りの技術をもたらしました。1587年にイギリス人の冒険家リチャード・ハクルートによって、植民者による最初のビール造りが試みられたとされる記録が残っています。


ハクルートは仲間のトーマス・ヘリオットがバージニア産の小麦について語った次のような言葉があります。

「われわれは故郷にあるのと同じような小麦で麦芽(モルト)を造り、その麦芽を原料に見事に望みどおりの良質なエールを醸造した」と記しています。


北米最初のイギリス領植民地であるバージニアのジェームズタウンを建設した植民者は、最初は1606年~1607年のアメリカ航海で運んできたビールで苦境をしのぎ、それが尽きると寄港する水夫たちが持ってきたビールを手に入れていました。

それでも足りず、もっとビールが飲みたいという入植者の声が上がると、1609年に醸造家に植民地への入植を求める広告をバージニアの総督が出すように命じた記録が残っていますが、ジェームズタウンで2軒の醸造所が操業していたのが確認できるのは、それから20年後のこと。1620年に現在のニューヨークに商業的醸造所が設立されました。


その後、17世紀までの間にビール醸造所が各地で誕生しました。でも、イギリス人植民者、その子孫たちはビール醸造を安定した産業として確立することができませんでした。

彼らに代わって、ビール醸造業を実際に精力的に推し進めたのは、1830年代以降に大挙して到着したドイツ人移住者でした。


アメリカの醸造家は、はじめ伝統的な上面醗酵ビールであるエールやポーターを造っていました。が、1840年にバイエルンからフィラデルフィアに移住してきたジョン・ワグナーが、ラガーの製造に必要な「下面醗酵酵母」をアメリカにもたらしました。

ドイツ人の人口増加による後押しも大きく、ラガーはたちまちエールやポーターに代わってアメリカ人のお気入りになりました。


19世紀には、合わせて800万人にものぼるドイツ人がアメリカに大挙して移住して来ました。20世紀のビール醸造を支配し、形を変えながら今日まで生き延びてきているアメリカの大手醸造会社の多くを築いたのは彼らドイツ人でした。

たとえば、エバーハート・アンハイザーはドイツ西部の故郷バート・クロイツナハから1842年にミズーリ州セントルイスに移住しています。アンハイザーは自分が設立した石鹸工場で財産を築き、主要な債務者が借金を返済できなくなると、代わりにその人物の醸造所を譲り受け、醸造業にも参入しました。


そのようにして、ババリアン・ブルーイング・カンパニーはE・アンハイザー&カンパニーと名前を変え、1861年3月にアンハイザーの娘がドイツのマインツ出身でビール醸造資材の会社を経営していたアドルファス・ブッシュと結婚。ブッシュは、義理の父のビジネスに加わり、醸造会社アンハイザー・ブッシュが誕生しました。こうして彼らが造るチェコ・スタイルの「バドワイザー」は、1876年に販売が開始されました。


この歴史ある醸造会社は、2008年にベルギーのビール会社インベブに買収・合弁され、世界最大のビール会社アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)傘下となりましたが、依然としてアンハイザー・ブッシュ社はアメリカ全体で12軒の醸造所を経営し、毎年合計およそ1億バレルを生産、アメリカ国内のビール消費量の半分近くを占めています。


余談ですが、「バドワイザー」という名称の使用をめぐっては、アメリカの「バドワイザー」の商標所有権と、チェコ共和国のブドヴァイス市で生産される「ブドヴァイゼル・ブドヴァル」の所有者との間で1世紀を超える論争が続けられてきましたが、現在では不問に付されているようです。


アメリカの二大ビールメーカーを語る時に外せないのが、もう一人のドイツ人アドルフ・クアーズ(ドイツ名はクールズ)です。彼は、1868年にアメリカに移住し、その4年後にコロラド州デンバーに落ち着きました。エバーハート・アンハイザーと違って、クアーズは故郷で醸造の経験があり、醸造の専門家でした。


彼は、ロッキー山脈のふもとのコロラド州ジェファーソン郡のゴールデンに醸造所を造り、最初にジャコブ・シューラ―という人物と共同経営にあたりましたが、1880年にクアーズはパートナーの権利を買い取り、醸造所はアドルフ・クアーズ・ゴールデン・ブルワリーとなりました。


1980年代にクアーズは、アメリカ中西部諸州から販路を広げて全国展開を始め、2002年にはイギリスのバートン・アポン・トレントのバス・ブルワリー・リミテッドが所有する資産を買い取り、さらに3年後にカナダのモルソン・ブルーイング・カンパニーと合弁するなど事業を拡大しています。コロラド州ゴールデンのクアーズ醸造所は、世界最大のビール工場で、年間およそ2000万バレル(約31億8千万kl)の生産能力を誇っています。


2008年から、クアーズはSABミラーとアメリカで合弁企業ミラークアーズを経営しています。

ミラー・ブルーイング・カンパニーもドイツ人移民のフレデリック・ミラーが設立した会社です。ドイツのリートリンゲン出身で、元はフリードリヒ・ミュラーという名前でしたが、ミラーは1854年にアメリカに移住し翌年にウィスコンシン州ミルウォーキー近郊の醸造所を買収しました。


商業的に成功した業界初の低カロリービール、「ミラー・ライト」を主力商品とするミラー社のビールは、アメリカ国内市場では、「バドワイザー」に次いで第2位のお人気ブランドとなり、2002年に南アフリカの醸造会社(SAB)に買収されてSABミラーとなりました。現在、ミラーはアメリカの6つの州でビールを造っていますが、ミルウォーキーの「ミラー・バレー」は今もミラーの「ホームグランド」であり、ミラーの前身であるプランク・ロード・ブルワリーを複製した建物は観光名所となっています。


クラフトビールのパイオニア「フリッツ・メイタグ」

アメリカ国内のビール消費量はABインベブとSABミラーの商品が大半を占めているとはいえ、近年のアメリカのビール業界で目立ってきたのが、「クラフトビール」醸造運動の盛り上がりです。この機運はアメリカ中どこに行っても少数ブランドのビールと限られた味のビールしかなく、しかもそれらの商品には個性がないという現状への反発から生まれてきました。


それら消費者の欲求にもっとも早い時期に「クラフトビール」の醸造に着手したのが、フリッツ・メイタグ(米国ブルワーズ・アソシエーション=BAの理事)でした。彼は、倒産しかかっていたサンフランシスコのアンカー・ブルーイング・カンパニーの権利の大半を1965年に買収し、アンカー・スチーム・ビールをよみがえらせました。このビールは浅い開方式醸造槽で醗酵させて造られます。1896年以来の歴史あるアンカー・スチーム・ビールは、1971年にメイタグによって初めて瓶入りの形で売り出されました。


※スチーム・ビールとは、本来低温発酵させるラガー酵母をエールのように常温醗酵させて造られたビールのことで、開栓時に勢いよくガスが抜ける音がスチーム(蒸気の抜ける音)に似ていたことからこう呼ばれるようになりました。スチーム・ビールはアンカー社の登録商標のため、一般的なスタイル(種類)名は、カルフォルニアコモンビールとも呼ばれています。


「現在のクラフトビール運動のルーツとなるアメリカの小規模醸造所の歴史は、1965年にフィリッツ・メイタグ氏が買い取ったアンカー・ブールイング、1976年にカルフォルニア州ソノマで誕生したニュー・アルビオン・ブルーイングなどに端を発する。その後、シェラネバダ・ブルーイングやブルックリン・ブルワリーといった醸造所が追随していった。これらのムーブメントの根源には、アメリカの大手ビールメーカーの造る"コーンなどの副原料を使ったライトな量産型ビール"よりも"ヨーロッパの伝統に基づく味わいの深いビール"を造るべきだという考えがあり、1960年代中頃からの自然回帰運動、ナチュラル思考、自然食ブーム、さらにホームブルー(自家醸造)解禁という背景もあり全米に広がっていった。


さらに、軸足を"伝統的なヨーロッパのビール"に置きながらも、"独自の発想と想像力で新たなビールを生み出す(アメリカンスタイルのIPAなど)"や、"ヨーロッパでは歴史的の中に埋もれていたり、一部のローカルビールとなっていた古典的なビールを復古させる(木樽熟成ビールやサワービールなど)"という次元に達していった。単なる物真似ではなく"ヨーロッパよりもヨーロッパらしく。そしてアメリカ的解釈によって進化させる"というところがアメリカン・クラフトビールの凄いところと言えるわけだ。(以上、◆アメリカのクラフトビールとは?~藤原ヒロユキ氏から抜粋・引用)


だからこそ、アメリカンスタイルのクラフトビールは、アメリカ以外の国にも広がっていきました。発生的なビール文化も持たない(日本も含む)の人々は、その新鮮で鮮烈な味わいに、伝統的なヨーロッパのビール大国はその進化に、驚きと影響を受けていったのです。そして、今も受け続けています。


小規模で独立心のある多くの醸造家がすぐにメイタグの手本に倣(なら)い、はじめはささやかだった流れが、ついには本物の大きな流れとなって、1990年には、稼働している醸造所の数はわずか10年前の3倍に急増し、BAの資料によれば、クラフトブルワリーの軒数は2012年が2401軒、2013年が2863軒、2014年が3418軒。「24時間に1軒のブルワリーが誕生」している計算になります。その勢いはまだまだ衰えることを知らず、「24時間に2軒誕生」の時代ももう眼の前という凄まじい勢いで伸び続けています。


以来、主にアルコール度数が高く、香り高いビールを生産するアメリカの「クラフトビール」醸造家たちは、ヨーロッパの伝統的なビール醸造法から多くを学んでいます。現在では、熱心なベルギー風の醸造所が数か所あり、「クラフトビール」の醸造はたいてい、技術革新と新しい試みがもっとも重視されています。


アルコール度数が高く、ホップをふんだんに使ったパンチの利いた「クラフトビール」が増える傾向がある中で、中には醸造法に凝ったビールもあります。ケンブリッジ・ブル―イング・カンパニーがボストンで営業しているレストラン形式のブルーパブでは、ワインの銘醸地ナパ・バレーのフレンチ・オーク樽で1年間熟成させ、ブドウとアンズを入れたビールを提供しています。


最近の日本で人気が高まっている「クラフトビール」の味の傾向としては、一番人気は、やはりホップの香りが程よく、喉越しが爽快な「ラガータイプ、とくにピルスナーなど」が最多の支持を集めていますが、20代女子を対象とした調査によれば、「フルーツビール」に興味を持つ人が多くなっている、という結果も出ています。(外食市場調査、2015・4/1~4/6、リクルートライフスタイル調べによる)。


【参考図書】・ギャビン・D・スミス『ビールの歴史』大間知知子訳、原書房2014年 ・スティーブ・ヒンディ『クラフトビール革命』和田侑子訳 ㈱ディスクユニオン2015年 ・古川英二編集『ビール事典』、㈱学研パブリッシング2014年

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