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コラム

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2016.02.16

醸造家が教えるビール講座~ホップの使い方~

ビール、おいしいですよね。クラフトビールというものが昨今大きな話題となり、ペールエールやIPAなど様々なタイプのビールがビアバーやコンビニでも飲めるようになりました。このコラムではビール醸造家としての立場からビールについての話をいろいろ書いていきたいと思っています。

最近、~というホップを使用!!てな感じでホップにフォーカスしたビールを見かける機会が多いので、すでに別コラムでも紹介されていますが、私の最初のコラムの題材としてビールならではの原料であり、且つビールづくりにおいて超重要であるホップについて書かせてもらいます。

ホップとは?

ホップの歴史植物としての特徴等は別コラムをご参照いただくとして、こちらでは実際に醸造する際にどのような観点から使用するホップの種類や量を決めているのかお話ししたいと思います。

  • ビール醸造時のホップの役割
    1. 苦味付け
    2. 香り付け

ビール醸造時のホップの役割

ビールを造るうえでホップの役割は

  1. 苦味付け
  2. 香り付け

の2つがメインとなります。
そしてこれはおいしさに直結する最大要因なのでビールにおけるホップの役割は非常に大きく、それだけにホップの種類の違いや量の違いが即、味の違いとして現れてきます。

苦味付け

まず、苦味についてみていきます。ほかのお酒では見られない、ビールならではの味覚"苦味"。これはホップに含まれるα酸という化合物を煮沸することで発生します。

ホップの種類によって含まれるα酸の割合は異なっていて、ピルスナーなどでよく使われるザーツというホップでは約4%、アメリカ産のチヌックというホップでは約12%など品種によってかなり開きがあります。α酸の割合が高ければ苦味が付きやすいホップであるということです。

どのホップがどれくらいのα酸を含んでいるのかはホップ毎に情報が出されているのでそれを参考にしています。収穫年によってもα酸の量は増減するので、同じレシピの場合、年によってホップ量を変化させたりする必要もあります。

また苦味は前述のとおり煮沸して初めて発生します。したがって製造工程で麦汁を煮沸する最初にホップを投入し長い時間煮沸するのと最後の5分間に投入するのとでは苦味の付き方が変わってきます。長く煮沸すればするほど苦味は強くなります。

ビールのレシピを造る際には狙った苦味になるようホップの種類、量、投入のタイミングを計算しているのです。

香り付け

つづいて、香りについてです。これはホップに含まれる香油によってもたらされます。主に

  • ミルセン
  • フムレン

という成分となるのですが、この二つの成分の割合によってさまざまな特徴ある香りとなります

簡単に説明すると

  • 『ミルセンが多ければそのホップは柑橘系の香り』
  • 『フムレンが多ければハーブや花のような香り』

を出します。

よくアメリカンスタイルのIPAで柑橘の香りを感じると思いますが、これはアメリカンスタイルのIPAではミルセンが多く含まれるホップを使っているからです。
逆にフムレンの多いホップは、ドイツやチェコのピルスナーなどでよく使われています。

このように、国によってどのタイプのホップが多く使われるかは異なっており、栽培されるホップもアメリカではミルセン系、ヨーロッパではフムレン系と別れています。

ただし、今日では世界的にアメリカンスタイルのビールが流行しているので、ヨーロッパでもミルセンの多い柑橘系の香りのホップが栽培されつつあります。

ホップのジレンマ?

製造工程においてホップは苦味付けのため煮沸中にビールに投入されますが、香り成分である香油は煮沸すると揮発してビールに残らなくなってしまいます。

『苦味をつけるために早めに投入したいけど、そうすると香りがなくなってしまう』

というジレンマを解消するため、今日では一般的に香り付け、苦味付けをそれぞれ分けてホップを使っています。

つまり、まず苦味付けのためのホップを煮沸初期段階で投入、煮沸終了間近に香り付けのホップを投入するというやり方です。こうすることで苦味と香りが両立したビールを造りだすことができるのです。

ホップの使い方まとめ

我々醸造家はこのようなホップの特性を理解し、組み合わせることで様々なビールを造っています。

今回の話をまとめると、ホップは苦味と香りの最重要ファクターで、それぞれ異なる成分によってもたらされていて、そのバランスをとるのが結構大変ってことです。(笑)

今回はホップの使い方についてのお話でした。次回はビアバーなどで名前を見かけたことがあるであろうホップたちを品種ごとに解説していきたいと思っています。

次回もお楽しみに。

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木水 朋也

1988/2/12生まれ

2014年に神奈川の老舗クラフトビールメーカー「サンクトガーレン有限会社」に入社。同年より醸造担当として同社のビール製造を行う。

在籍中にWBA等国際的なコンペティションでの受賞歴あり。

2016年2月、ライナ株式会社に入社。ShinjukuBeerBrewingの醸造長として、新たなビールづくりを開始。

2017年11月には、浅草橋に新工場「CraftBeerCompany」が稼働開始し、2つの醸造所で多様なビール造りを行っている。

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